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極私的2004年ベスト盤

 12月18日、これまた四ツ谷「いーぐる」にておこなわれた特集 <<年末持ち寄り大会「2004ベスト・アルバム」>> に参加し、僕も個人的ベストを紹介させていただいた。
 実を言うと、ジャズという括りで考えると、今年は僕は新譜をほとんど買っていない。結局、原稿の仕事やAlan Dawson特集の準備のために購入した過去のアルバム、それにこれまた過去の発掘音源であるブートレグが大部分なのである。
 結局、悩んだあげく以下のアルバムを紹介した。

Live at Umbria Jazz (IL Manifesto)
El Negro and Robby Band
Recorded live at Umbria Jazz Festival 2003
Released in January 18, 2004
Horacio "El Negro" Hernandez (drums, Zen drums); Robby Ameen (drums, Zen drums); John Beasley (piano, keyboards); Carlos del Puerto (bass, vocals); Pedro Martinez (percussions, vocals); Yosvany Terry (saxes); Brian Lynch (trumpet); Innasoul (vocals); Denise De La Cruz (vocals); and others

 昨年と同じバンドになってしまったが、これは僕がHoracio "El Negro" Hernandezに惚れ込んでしまっているからなので仕方がない。昨年紹介したのはスタジオ録音のアルバムOnto the Street (Still at the Third World War)だったが、今回はタイトルのとおり、昨年のUmbria Jazz Festivalでのライブを収録したものだ。あとで八田さんが「いかにもライン録りみたいな音ですねえ」と言っていたが、たぶんフェスティバル事務局で記録用に録音していたテープを使ったのではないかと思う。
 ここでの演奏はもう最初から最後までイケイケであって、ルンバを基調とした分厚いビートが地鳴りのごとくうねり、その上でホーン隊が炸裂するわスペイン語のヴォーカルは飛び交うわラップまで乱入するわの大騒ぎ。こんなユニーク(褒め言葉)なバンドは他にない。
 じっくり聴いてみると、Horacioはルンバのパターンを出す際、有名な左足はあまり使っていない模様。音から判断すると、左手のスティックでウッドブロックを叩いているようだ(Robbyの楽器のセッティングにはウッドブロックは入ってないので、これでどちらがパターンを出しているか区別できる)。実際、Horacioはハイハットのすぐ脇にウッドブロックをセットしており、左手でそれを叩きルンバのパターンを維持しながら右手一本のダブル・ストロークと両足のツイン・ペダルを駆使して超高速かつ変態なリズムを叩きまくる、ということをよくやる。
 この左手のウッドブロックによるルンバ・パターン、実はもとをたどればキューバ時代の彼の師匠のひとりであるEnrique Pla(IRAKEREのドラマー)の得意技だ。Enriqueの楽器のセッティングは変則的で、タイコ類とハイハット・シンバルは右利き用の並べ方をしているのだが、ハイハット以外のシンバル類はライド・シンバルが左手側でクラッシュ・シンバルが真ん中から右手寄りとなっており、あきらかに左手リードの形になっている。調べてみたところ、Enriqueは少なくとも手に関しては左利きらしい。利き手と利き足の左右は必ずしも一致するとは限らないので、もしかしたらそういうことなのかも知れない。ともあれ、彼は利き手の左手で、ハイハット脇にセットしてあるウッドブロックを叩いて、ルンバのリズムパターンを出すことがあるのだ。それをHoracioも受け継いでいるというわけなのである。Horacioが左利きかどうかは未確認だが、左手も左足も非常に強いことは間違いない。
 ちなみに、Horacioの左足側にはペダルが三つ並んでいる。内側から順番に、ベースドラム用のツインペダルの片方、ハイハットのペダル、それにカウベル用のペダルである。ベースドラム一個のセットでペダル数が合計四つというのは、数から言っても多いほうだが、ここまで激しく左足側に偏っているというのはとても珍しい。先に触れたように、彼は最初、左足のカウベルでのルンバ・クラーヴェで有名になったが、彼の左足の技はそれだけではないのだ。
 ちなみにこのCD、HoracioのサイトにもRobbyのサイトにもしっかり出ているので正規盤のはずなのだが、どういうわけかほとんど巷に出回っていない。もちろんCD-R盤ではなく、ちゃんとプレスされたものである。僕が買ったのは、イタリアにある、フリージャズとワールド系・クラブ系ミュージックに特化しているらしい面白い品揃えの小さなネットショップなのだが、そこを含めてごく数軒のイタリアのショップでしか扱っていないようなのだ。しかもその半分はイタリア語オンリーのサイトで、英語ページのあるサイトはほんの二、三軒しかなかった。大手のショップは、TowerもHMVもVirginもCD Universeも全滅。Amazonは、なぜかフランスだけはカタログに入っていたが、価格は異様に高かった(参考までに書いておくと、僕が買ったショップでは、日本円にして1000円しなかった)。日本では、今年の春ごろにディスクユニオンに少しだけ入荷していたようだが、それ以外ではまったく見ていない。もしかしたらイタリア国内限定リリースなのかも知れない。

 他に、候補として当日「いーぐる」に持参していたCDは次のとおり。

CompleteFriday Miles at Fillmore (So What)
Miles Davis
Recorded live at Fillmore West in June 19, 1970
Miles Davis (trumpet); Steve Grossman (soprano & tenor sax); Chick Corea (electric piano, percussions); Keith Jarrett (organ); Dave Holland (acoustic & electric bass); Jack DeJohnette (drums); Airto Moreira (percussions)

 かのAt Fillmore: Live at the Fillmore Eastに使われたテープのうち、金曜日分をノーカットでおさめた完全版である。これはいわゆるブートレグだが、音質も内容も素晴らしい。こういうものこそ公式盤で真っ先に出すべきものなのではないのだろうか。実際、フィルモアの完全版が公式盤で出るという噂はしばらく前からあった。しかし、レコード会社が出さなくてもいいような意図不明のボックスセットにかまけてもたもたしているうちに、ブート業者に先を越されてしまったというわけなのだ。Celler Doorとまったく同じパターンである。もう「やれやれ」としか言いようがない。いちどBob Beldenにマイルス関連の発掘について、どういうコンセプトで、どういう進め方をしているのか問いただしてみたいような気すらする。

Italuba (Pimienta Records)
Horacio "El Negro" Hernandez
Released in 2004
Horacio "El Negro" Hernandez (drums); Amik Guerra (trumpet); Ivan Bridon Napoles (keyboards); Daniel Martinez (bass)

 前出のHoracioの初リーダー・アルバム。キューバ出国後、アメリカに移るまで彼がしばらく住んでいたイタリアに戻って録音されたものだ(タイトルはITALYとCUBAを合成した造語である)。ルンバを基調としつつもさまざまな音楽の要素を取り入れた、Horacio流のラテン・ジャズになっている。80年代マイルスの音に捧げた"90 Miles to Miles"という曲もある。ちなみに、キューバからアメリカの最南端であるKey Westまでの距離が約90マイルである。
 他の共演者たちが彼と比べるとちょっとパワー不足なのが惜しい。

 また「いーぐる」ではDVDはかけられないため持参しなかったのだが、やはりこれを無視するわけにはいかないだろう。

Miles Electric: A Different Kind of Blue (Videoarts Music)
Miles Davis
Recorded live at the Isle of Wight Festival in August 29, 1970
Miles Davis (trumpet); Gary Bartz (soprano sax); Chick Corea (electric piano); Keith Jarrett (organ); Dave Holland (electric bass); Jack DeJohnette (drums); Airto Moreira (percussion); and more performance footages and interviews

 マイルスも他のメンバーもとにかく猛烈にかっこいい。また、インタビューとともにおさめられている当時の共演者たちのマイルスに捧げる演奏の中で、Airtoのものは最高である。必見。

 ついでに、ジャズ以外で今年出たCDのうち、気に入ったものをいくつか挙げておく。

Encore (Aftermath Records)
Eminem
Released in 2004
Eminem (rap vocals); D-12, Dr. Dre, 50 Cent, Nate Dogg, Obie Trice, Stat Quo (rap vocals)

 ご存知EMINEMの4thアルバム。彼の作り出す世界には、ひりひりするほどに切実かつシリアスな部分と、どうしようもなくおバカな部分とが同居している。とくにヴィデオ・クリップを見るとその落差の激しさがよくわかる。しかしよくよく見ると、おバカな部分の向こう側には、自分自身も含めてあらゆるものを突き放して見つめ、その価値観を絶えず問いなおしつつ根底からひっくり返して笑いのめしてしまおうとする、彼のクールな視線が透けて見える。彼は自分が何をしているのかちゃんとわかっているのだ。その意味では、彼は実に知的なアーティストだと思う。まあ、自分自身を突き放して的確に笑いのめすなんてことは知的な人間でないと不可能なのだが。
 あるいは、彼は生涯のある時点でそういう視点を持つことができたからこそ、今でも発狂したり自殺したりすることなく生き延びていられるのかも知れない(彼はメジャー・デビュー前にいちど自殺未遂をしている)。EMINEMとカート・コベインとは、音楽スタイルこそまったく違うものの、精神的にはどこか共通する部分があるように思うが、両者の決定的な違いはそのあたりにあるのかも知れない。EMINEMは一種のトリックスターであり、しかも自分でもそれを意識しているが、カートはそうではなかった。
 いずれにせよ、そのクールな視線の根幹にあるのは、結局は「怒り」なのだろう。「怒り」の矛先は自分自身に向かうこともあれば他者に向かうこともある。今回のアルバムでは、"MOSH"に見られるように政治的な「怒り」が出てきているのが面白い。もちろん、例の大統領選のせいもあるのだろうが。今回の大統領選では、多くのアメリカのミュージシャン、アーティストたちがはっきりと反ブッシュにまわり、みずからの作品でそれを表明したり、政治活動に参加したりしていた。欧米では、成功し有名になったアーティストが、自分の社会的影響力を充分に自覚したうえで政治や社会に対し明確にコミットし、積極的にさまざまな活動に参加しようとすることは珍しくないが、今回のようなケースは今までになかったのではないか。
 音づくりは前作よりは少しポップになったような気もするが、まだまだEMINEMの「怒り」は健在である。


Street's Disciple (Columbia)
NAS
Released in 2004
Nas (rap vocals, various instruments); Olu Dara (vocals, guitar, harmonica, trumpet); Emily, Kelis, Keon Bryce, Maxwell, Scarlett, Quan (vocals); Ludacris, Busta Rhymes (rap vocals); Vincent Henry (guitar, strings, harmonica, saxophone); Chucky Thompson (guitar, piano, bass guitar, drums); Salaam Remi (guitar, Fender Rhodes piano, organ, bass guitar, drums); L.E.S. (drums); Doug E. Fresh (sound effects)

 NASの新アルバム。タイトルは「ストリートの使徒」という意味。Decipleは本来、キリストの弟子である12人の「使徒」の意味である。そういえばこのCDのジャケット、どこか「最後の晩餐」を意識しているようではある。
 注目はシングル・カットされて現在MTVでヴィデオ・クリップが流れまくっている"Bridging the Gap"である。この曲では彼の父親である、ジャズ・トランペッターOlu Daraがフィーチャーされており、クリップにもしっかりと出演しているのだが、これが実に面白い。
 最初はゆったりとした2/4拍子のコテコテのブルーズではじまり、Olu Daraがシブいヴォーカルを披露している。クリップでは、NASや共演の女性ダンサーまで含めて全員が第二次大戦前、おそらくは1930年代あたりを意識したファッションで固めている。背景には若き日のOlu Daraと子供時代のNAS、それに彼らの一族のものらしき古い写真が何十枚も貼られている。そしてスネア・サウンドの六連符のフィルインを合図にリズムはファンクに変わり、NASのラップに入るのだが、彼のリリックの中にも「おやじはMilesやDizzyと同じように高潔な魂を守り抜いた」とか「おれたち(NASとOlu Dara)はこのトラックで、ブルーズからジャズ、ラップへと続く音楽の歴史の中の溝を懸命に橋渡し(bridging the gap)しようとしてるんだ」などというフレーズがばんばん出てくる。もっと後のほうでは実際にブラック・ミュージックの歴史を語る部分があったり、Princeの名前が飛び出してきたり、もちろん父親のOlu Daraに関しても山ほど言及されている。そして最後は「Rest In Peace, Ray Charles.」という台詞で締めくくられるのである。クリップでも、摘み取られた綿花やらバルブの壊れた古いトランペットやら、ブルーズやジャズを連想させる小道具が次から次へとあらわれる。
 つまりこの曲は、現役バリバリのラッパーがジャズ、ブルーズまで含めたブラック・ミュージック全体に対するリスペクトを込め、すべてを統合しようと試みたものなのである。そして、実際にMilesやDizzyなどと同じ時代の空気を共有したジャズ・ミュージシャンである父親を持つNASだからこそ、このようなことが可能となったのであろうと思う。


Under My Skin (Arista Records)
Avril Lavigne
Released in 2004
Avril Lavigne (vocals); Raine Maida (guitar, keyboards); Michael Ward, Ben Moody (guitar); Evan Taubenfeld (acoustic guitar, electric guitar, drums, background vocals); Butch Walker (electric guitar, keyboards, bass guitar, percussion, programming, background vocals); Patrick Warren (strings, chamberlin, keyboards); Chantal Kreviazuk (piano); Jon O'Brien (keyboards, programming); Kenny Aronoff (drums, percussion); Josh Freese, Brooks Wackerman (drums)

 11月の「いーぐる」での特集でも使ったCD。ここ数年、アメリカではMichelle BranchやVanessa Carltonなどといった、作曲も楽器もできる十代の才能ある女性ポップ・シンガーが大量にデビューしてきたが、その中でもいちばん「まっすぐさ」を感じさせるのがこのAvrilである。基本的には歌も外見もけっこう攻撃的で鋭い感じなのだが、その裏に弱さや脆さ、垢抜けなさが隠れているところが彼女の魅力だ。そういえば彼女、今年来日したときにMTV Japanの密着取材で原宿に買い物に行っていたが、途中あるショップでネルシャツを手に取って「わたし、こういうのも似合うのよね、ある意味。カナダ人だし」などと苦笑しながら言っていたものだ。その様子がなんともかわいらしかった。


 あらためて上のセレクションを見ると、やっぱり「ジャズ」という音楽はもういったん終わったんだなあ、という感を強くする。
 ただ、ではジャズは完全に死んでしまったのかというとそういうわけでもない。たとえば僕の周辺でも、30歳前後の女性でジャズに興味を持っている人は意外と多いのだ。
 もっとも、彼女たちの言う「ジャズ」にしても、必ずしもいわゆる「4ビート」を指すとはかぎらない。だから、彼女たちもどこから入っていいのかわからないし、従来の「ジャズ・ファン」も何を紹介したらいいのかわからない、ということになる。
 これからのジャズ評論家がしなければならないことは、まさにこういう部分で「bridging the gap」することなのではないだろうか?
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tag : エル・ネグロ・アンド・ロビー・バンド マイルス・デイヴィス エミネム NAS アヴリル・ラヴィーン オラシオ"エル・ネグロ"エルナンデス

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Author:ぶる
大学時代にアメリカのど田舎に留学し、ジャズを中心にあらゆる音楽を聴き、酒と煙草と本と香水とNYと南フロリダとブルックス・ブラザーズと前のめりなお笑いを愛し(ただし最近ちょっと酒のほうは弱くなってきたかも)ある時は会社員、ある時はドラマー、ある時は音楽評論家、ある時は翻訳家といろいろな顔を持つ♂です。

太古の昔、パソコン通信の時代から「ぶる」というHNで活動しています。

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