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村上春樹フェア?

325037a6.jpg 今日、仕事の帰りに渋谷のブックファーストに寄ったら、思いっきり村上春樹コーナーができていた。今回のノーベル文学賞候補がらみであろう。まあ、受賞こそしなかったものの、もともと彼の本は売れるし、さらに今回の件で大きな話題になったのは間違いないので、書店側が大損するということにはならないだろう。
 さらにその後タワーレコードに寄ったら、村上春樹へのオマージュということで『アメリカから届いた10のオマージュ』というCDが出ていた。これは村上春樹の小説に登場した曲をカバーしたアルバムだそうで、参加メンバーはChick CoreaMichael BreckerRon CarterDavid Garfieldなどとかなりの顔ぶれである。村上春樹本人の好みとはちょっと違うような気もするが。ともあれ、彼の小説へのオマージュというかたちで、すべて新録音で制作したという。加えて、その様子を記録したCD付きのフォト・ブック『音楽家たちの村上春樹 - ノルウェイの森と10のオマージュ』も同時発売されていた。いずれも企画はもちろん日本なのだが、それでもこういう企画が成立するようになったというのは、村上春樹という存在がもはや文学というジャンルや国境を超えて社会現象化しつつあるのだなあ、という感を強くする。それは『ノルウェイの森』がバカ売れしたときの騒ぎとは違うものだ。そしてそれは決して悪いことではないと思う。
 ついでに言えば、『ノルウェイの森』という作品、いまだに毀誉褒貶激しいところがあるが、僕の個人的な意見としては、あんなに怖い作品はないと思う。人間の心の中の深い暗い闇を愚直なほどに真正面から描いた、ひりひりするような痛みを感じる作品である。読んでいると、その闇の中にすうっと吸い込まれてしまいそうに感じることがあるのだ。吸い込まれたら戻って来られなくなるんじゃないか、という恐怖を感じる。正直、なぜあんなに売れたのかわからない。断じて軽薄なラブ・ストーリーなどではないのだから。
 ところで、彼の作品のなかで今のところ僕がいちばん好きなものは『ねじまき鳥クロニクル』である。前に、この作品の英語版が海外で本格的に注目されるきっかけになったと書いたが、オリジナルの日本語版でもやはりこの作品は彼にとってのターニング・ポイントになったと思う。この作品を書くことで、あきらかに彼はひとつ上の別の次元に突入した。文字通り「井戸=イド」の底に下りることによって人の心の奥底を見つめ、それまでは意識して避けていた感のある「暴力」をも正面から取り上げ、その中から人の心の深い闇と混沌とをすくい取って圧倒的なパワーで書き切った。ひとつの作品として成立してはいるが、その中には巨大なカオスと不条理が渦を巻いているのだ。あらすじを書くことがきわめて困難な作品なのである。彼は長編小説を書くとき、事前に構成を決めたりせず、ただ頭から流れ出てくるまま順番に書き進めていき、気がついたら終わっているのだそうだが、この作品、よく終わらせることができたなあと思う。ある意味、この作品そのものが力強い巨大な混沌そのものなのである。そしてそれこそが現代社会の姿でもある。
 村上春樹自身と対比されることも少なくない主人公「僕」のライフスタイルそのものも(この作品に限らないが)結局は平均的な現代の日本人のものに他ならない。実際、欧米のポップスやらパスタやらその他彼の小説に出てくるさまざまの小道具は、普通に僕たちの生活に入り込んでいるし、「僕」の台詞や行動が提示する価値観は、少なくとも僕には違和感はない。そこには、文化や民族の差を越えたきわめて普遍的なものが含まれていると思う。そして同じように感じる読者が多いからこそ、彼の本が世界中で売れているのだろう。
 かつて大江健三郎が彼を芥川賞の選考で落としたときにその理由として挙げたといわれる「欧米文化をただそのまま受け入れていて、それに対する葛藤や悩みがない」というのは、まさに彼の世代=団塊の世代以降の日本人の平均的な姿そのものである。それはすでにそこにあるもので、存在することがあたりまえであり、葛藤や悩みや屈折した感情の対象ではないのだ。実際に戦時下の生活を経験し、進駐軍の姿をその目で見た大江らの世代とはどうしたってギャップが出てくる。もし近いものがあるとすれば、海外に出た経験をへて日本に帰国した際に起きる「リバース・カルチャーショック」ぐらいであろう。これは僕自身にもある。しかし、彼が書き続けているのは、そのような目に見える文化や民族の違いではない。ノーベル賞の選考にはそういう部分も影響するようだが(今年のOrhan Pamukの受賞理由を見てもそれが窺える)、彼がくりかえし書いているのはそれらを超えたところにあるひとりひとりの「個人」なのである。
 しかも、彼は書くたびにどんどんスタイルや文体を変えて実験をしている。初期の『風の歌を聴け』や『1973年のピンボール』などの初期作品と最近の作品とでは、スタイルにおいても文体においてもかなりの違いがある。もちろん、その中にも「春樹節」とでも言うか、まぎれもなく村上春樹の文章だという刻印はしっかりと刻み込まれているのだが。
 ともあれ、書いた本人にとってさえ、なぜこんなものが自分の中から出てきたのかいまだに整理がついていないという『ねじまき鳥クロニクル』、仮にも本好きを自認するほどの人なら一読する価値はあると思う。
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tag : 村上春樹 チック・コリア マイケル・ブレッカー ロン・カーター デイヴィッド・ガーフィールド 大江健三郎

comment

Secret

村上春樹はほとんど読んでます。

ぶるさんのおっしゃるように、この本は他の本とは違う圧倒的な力があるように思いました。







 僕も翻訳書以外はだいたい読んでます。『ねじまき鳥』は、書くほうもかなり体力使ったんじゃないかなあ。
プロフィール

ぶる

Author:ぶる
大学時代にアメリカのど田舎に留学し、ジャズを中心にあらゆる音楽を聴き、酒と煙草と本と香水とNYと南フロリダとブルックス・ブラザーズと前のめりなお笑いを愛し(ただし最近ちょっと酒のほうは弱くなってきたかも)ある時は会社員、ある時はドラマー、ある時は音楽評論家、ある時は翻訳家といろいろな顔を持つ♂です。

太古の昔、パソコン通信の時代から「ぶる」というHNで活動しています。

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