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鳥居みゆき著「夜にはずっと深い夜を」を読み解く

鳥居みゆきの短編小説集「夜にはずっと深い夜を」を読みました。以下、現時点での自分なりに読み解いた結果を書いてみます。思いっきりネタバレを含むので、未読の方はここから下は読まないでください。

この作品にはさまざまな業を抱えたさまざまな登場人物が出てきます。いや、人間だけでなく無機物も出てくるので「キャラクター」と呼んだほうがいいかも知れません。そしてそれぞれがあちこちで互いに複雑に絡まりあっています。
「華子」は花言葉に絡めとられた華子であり、「永遠の誓い」の華子であり、冒頭に戻って娘のゆりちゃんを水責めにする「きれいなおかあさん」です。「華子」の業は、甘い卵焼きとともにそのまた母親から受け継がれています。そのゆりちゃんを暗い影から、いつも串団子にされていただんごむしが見つめています。「シズカ」は、友人の「華子」がそんな業を抱え込んでいることには気づかず思考と薬の泥沼に落ち込んで「布施木先生」と「ずっとずっと深い夜」を想い、「シズカ」のもとにある煙草、時計、筆ペン、パズルもそれぞれ何かを抱え込んでいます。「華子」が追いかける男のとれかけたボタンは早く気づいて欲しいと願い、「葉子」は「シズカ」の先生でもある「布施木先生」に余命の心配と自分が抱えたものをぶちまけつつ「あっそう」と言い、「葉子」が心配性になるほど心配する余命を手術であっさり伸ばす患者がいます。花言葉に絡めとられ刃傷沙汰を起こした「華子」とその彼氏のいる会社から転職した女は地獄を望み生き地獄の無間地獄に陥ります。伸びゆく成長を止めようと飛び降り自殺した身長3メートルの「幸子」と群馬西中学校の同級生だった「佐々木さん」が想いを寄せていた「ゲン」こと「のり子」は頭ギチギチになったあげく無実の虫を殺してしまい、その罪悪感のあまり壁に頭を打ちつけて死にます。その現場にかけつけた「俺」は生き地獄の無間地獄に陥った女を捕まえた警察官で、二つ上の姉とゴミ屋敷に暮らし「ゴミちゃん」と呼ばれ、やがて落ちぶれて最後は或るマッチ売りの少女に火をつけられて焼け死にます。その脇でライターを売るバイトをしている「ポン助」のバイト友達である「まさし」は長い間「いちゃつき心中」の女の頭の中の恋人で、その「まさし」から赤坂でライターを買って一目惚れした絵本作家の「明日香」は「まさし」とのクリスマスを目前に時間ループに陥ってしまい「カバのお医者さん」の原稿を終わらせることができません。
結果的に、ほとんどの短編はいずれも一人称のモノローグ、あるいは三人称の形を取っていても事実上主人公の視点から語られているにもかかわらず、全体的に見れば各キャラクターは複数の視点から語られている、という実に手の込んだ構造になっています。語りの視点がどんどん変わっていくため、一種の「目くらまし」のような効果が生じ、読者は油断するとそれに翻弄されてしまいますが、実はすべてが繋がっていて周到に構成されているのですね。
さらに、ところどころに特定の短編に繋がっているわけではないけれどもすべてと通低するような短編がぽつりと置かれていたり、読売新聞「popstyle」で昨年掲載された「妄想ブログ」を加筆修正したものがバラで他の短編の途中に突然挟み込まれたりして、まるでジャズ・ドラムのスネアやベードラのアクセントのような効果を生んでいます。ちなみに、この「妄想ブログ」からの文章はいずれも赤いページに印刷されていますが、その赤いページで区切られた本文の部分(つまり黒or白のページ)のページ数は、扉の真っ赤なページから最後の奥付ページまで通して見ると頭から順に16、32、32、32、32、16となっており、完全に対称形となっています(本の小口や天の部分を見れば視覚的にもわかりやすいと思います)。本文が進行していくのと同時に、「妄想ブログ」部分は独立した別の構造とリズムで進行しているのですね。これってまさにポリリズムなのではないでしょうか。
なお、これらの「短編」のひとつひとつは非常に短く、また文体や表記の仕方も通常の「小説」のものとはちょっと違います。見かけ上は詩のようにも、またコントのネタのようにも見えます。実際、装丁や造本は詩集のようにも見えますし、またGETライブなどで演じられたネタとほぼ同じ内容の「短編」もあります。ネタと同じ内容のものについては、小説として書いているうちにネタとしてスピンアウトしたのか、あるいはその逆にもともとネタとして作られたものが小説の中に取り込まれたのか、どちらなのかは僕にはわかりません(あ、「或るマッチ売りの少女」だけは「妄想ブログ」にすでに原型がありますね)。ただどちらにせよ、実際に声に出してみながら書いたのではないかと思えるところが多々ありますね。もしかしたら、彼女はネタに限らず何かを書くときはいつもそうやっているのかも知れません。ちなみに、我が敬愛する筒井康隆も、実際に声に出したり体を動かしたりして演じてみながら書くことがよくあるそうです。彼も役者出身だからでしょうか。
そうそう、忘れてならないのが冒頭と最後のグミの話です。人はたとえ死んで肉体がなくなっても、誰かの記憶に残っているかぎりは生きている。でも、忘れ去られてしまったとき、その人は真の意味で「死」を迎えるのでしょう。「Remember me」と言ったのはハムレットの父の幽霊でしたが、これは鳥居みゆきの「Remember me」なのかも知れません。

以上、自分なりに「夜にはずっと深い夜を」を読み解いてみました。また何度か読み返したら違うことを感じたり、新しいことに気づいたりするかも知れませんね。実際、まだ何か読み落としていることがあるような気がしているので。

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tag : 鳥居みゆき お笑い 芸人 夜にはずっと深い夜を

comment

Secret

No title

お気づきかもしれませんが、カバーを外した背表紙に非常にうっすらとタイトルが…鳥居さんの作品はどれもクオリティが高いですね。

しかしドリームマッチは残念でした…

トータルテンボスとやれればよかったのに…

No title

はじめまして、いつも楽しく拝見しています

彼女は、この内容で、90分ぐらいの一人芝居を構想しているのかもしれないと感じました。
そんな舞台を見たいと思います。彼女のネタは、もうお笑いと言うよりは演劇の強度を備えていると思います。

呼ぶ

偶然とはいえ、結果的には「〇〇ピー」となりました。
しかし、連日流れている日テレのインタビュー、アレどうにかなんないんですかねぇ?
白衣装×ウェーブヘア×ポポポ~はモロ鳥居さんですよ。

No title

>>鳥インフル様
そうですね、この本といいDVDといい、彼女の作品にはあらゆるところに仕掛けがあって、きちんと向き合わないと彼女のたくらみを読み取れないところがあると思います。作品を見ること・読むことはある意味作り手との格闘ですが、鳥居さんは実に格闘しがいのある表現者だと思いますね。
ドリームマッチ、確かにトータルテンボス藤田と組んだら「もりすぎ★パンチ」の世界に突入できたかも知れません。

>>kuri様
いらっしゃいませ。いつもお読みくださりありがとうございます。
確かにそうかも知れません。あるいは映画かも。いずれにせよ、彼女の作品はジャンルの枠をぶち破る独自の世界と表現の強度を持っていると思います。

>>ノイエ様
「のり子」、偶然にもまさに予言のような形になりましたね。
でも、伊集院光もラジオで言ってましたが、鳥居さんはああいうことにはならない、というのはわかる人にはわかると思いますよ。

No title

こんばんわ。はじめまして。
いつもROMってばかりいまして、楽しく拝見させて
いただいていましたが、本を読み、私が言葉にできなかった
なんといったらいいかわからない思いがそのまま
綴られていたのですっきりしました。
まさに書いてある通りのような事を私も思っていました。
全部になんらかの接点があるのはわかったんですが、
自分の中で整理できずもやもやしていたんですが、
このブログを読んでよくわかりました。
また拝見させていただきます。
雑多な文章で失礼いたします。

なるほど

はじめまして。
すごくわかりやすく全体をまとめていただいて、
自分が見落としていたところに気づきました。

単なるホラーではなく、ちょっぴり笑えました。(これは私の感想ですが)
特に布施木先生のくだり。
コントか何かで同じ台詞がありましたが、
改めて、はまってしまいました。

各章が絡み合うトリッキーな構成。鳥居さんの才能ってすごい!!!

No title

>>なお様
いらっしゃいませ。いつもお読みくださりありがとうございます。
この世界、ある意味現実社会の縮図でもあるんですよね。あらゆる登場人物が意識的にせよ無意識的にせよ少しずつ接点を持ちつつ、それぞれが自らが主人公の別々の物語を生きているわけですから。
少しでも役に立てたようで嬉しいです。また遠慮なくいらしてくださいね。

>>もの様
僕も何度も笑いましたよ。この本は基本的には「苦い笑い」の本だと思っています。断じてホラーなどではありません。
彼女の文章、もっと読んでみたいですよね。

ゴミ屋敷って…

初めまして、見事な解説ありがとうございます。
私的には、彼女の書く文章は「荒削りなダークな新井素子」という感じがしました。(ホメ言葉になっているかどうか…?)

さてさて、各話が繋がっているのは何となく気がついておりましたが、ぶるさんの解説により再度読み返すことにしました。

そこで、私が一番最初に気になったのは「ゴミ屋敷」ですね。
この話って、例の大問題となった「エ○タの神様批判」をモチーフに更にナニを効かせたモノになっていませんか?
特異な状況がテレビの演出で更に広がり終息していくという辺りが、「エ○タの神様」を表しているというか… これ以上書けないですけど…

深読みしすぎかな?

ども。

ぶるさんのこの本に対する書評が出ていたのは、だいぶ前から知ってました…やっと読める状態になりました。

ホントに綺麗にまとめていただき、ありがとうございます。
各話の繋がりがハッキリして、今後読み返す時はもちろん、まだ頭に残っている印象をよりクッキリ繋ぎあわすことが出来ました。(答え合わせをしてるようでした)

読んでる最中に思ったというか、やってみたんですけど、鳥居さんがライブなどで演じた場合、こんな感じかな?って…スッと入ってくるんですよね。思わずクスクスと笑ってしまいました。
他の方を引き合いに出して良いのか分からないけど、爆笑問題さんの日本言論シリーズとかも本人さんの漫才を読んでいながら見て聴いている感じになるんですよね。。。勝手に音や動きを付け足すというか…表情まで出てくる。
やっぱり文章が書ける人は強いですね。演者としても素晴らしいですし。
活字の規制はテレビなどよりも全然緩いでしょうし、読み手がしっかりしていれば、ライブなどと同等の効果で、より鳥居さんが表現したい事を形に出来るかもしれませんね。今後も是非とも読みたいです。

まぁ、現時点でぶるさんの書評以上に気付いた事などは無いなぁ…と。いやいや読み返してみても(笑)
いつもながら気付かされることの方が多かったです。

また来ますね。
何回読み返すだろう?この本。。。
まだまだ違った表情が出てくるかな?

長くなりましたね、ではでは。
あっ!「原付18キロオーバー」の件、いやはやごもっともで(笑)

No title

>>でろでろ様
いらっしゃいませ。なるほど、新井素子ですか。どうでしょうね。鳥居さんの文体はあそこまで口語的ではありませんが。
「ゴミ屋敷」については、僕はもっと一般的なマスコミ(特にテレビ)への皮肉と読みました。初期の筒井康隆のような感じですね。もちろん、そういう深読みも可能だと思います。

>>kaji-chan様
確かに鳥居さんの文章は「肉声」がダイレクトに聞こえてくるところがあると思います。
自主規制ですが、活字の世界も結構あるのですよ。まあ、小説の世界では新聞や雑誌に比べれば緩いですが、それでも首をかしげるような規制はやっぱりありますが。「狂」の字が使えないとか「気違い」と書いてはいけないとか。「気違い」についてはワープロソフトでもたいていデフォルトでは変換できないようになっています。知らないうちにくだらない自主規制はどんどん浸透しているのです。

No title

すみません、初歩的な質問かもしれませんが、この本、書店には売ってませんか?ネットのみですか?今からでも手に入りますか?

No title

>>ゆん様
もちろん本屋でも売ってますよ。どうやら売れ行き好調らしくて今ちょっと品薄になっているようですが、増刷が決まったようなので間もなくまた店頭に並ぶと思います。
プロフィール

ぶる

Author:ぶる
大学時代にアメリカのど田舎に留学し、ジャズを中心にあらゆる音楽を聴き、酒と煙草と本と香水とNYと南フロリダとブルックス・ブラザーズと前のめりなお笑いを愛し(ただし最近ちょっと酒のほうは弱くなってきたかも)ある時は会社員、ある時はドラマー、ある時は音楽評論家、ある時は翻訳家といろいろな顔を持つ♂です。

太古の昔、パソコン通信の時代から「ぶる」というHNで活動しています。

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